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季節を味わう

ブラッククイーンって何?

深い紫色のぶどうジュースと黒ぶどうを置いた静かな食卓

軽井沢で出会った濃厚ぶどうジュースから、日本ワインの歴史へ。

皆様は、「ブラッククイーン」というぶどうをご存じでしょうか。私は先日、軽井沢を訪れた際に、ブラッククイーンという名前のぶどうジュースに出会いました。

この記事で分かること

  • ブラッククイーンが日本で生まれたぶどうであること
  • 川上善兵衛と、日本ワインづくりの歴史
  • 一杯のジュースから見えてくる、日本の気候と品種改良の物語

一軽井沢で出会った、印象的な一杯

自宅に持ち帰って飲んでみると、とても濃厚で深みがあり、まるでワインのような味わい。

いつものコップではなくカクテルグラスに注ぐと、色合いや香りをゆっくり楽しめる、特別な一杯になりました。

ワインのような瓶に入った美しい佇まいも印象的で、贈りものにもよさそうです。

ところで、ブラッククイーンとは、いったいどのようなぶどうなのでしょうか。

二ブラッククイーンは、日本で生まれたぶどう

「ブラッククイーン」という名前から、最初は海外のぶどうなのかなと思いました。けれど調べてみると、ブラッククイーンは日本で生まれたワイン用のぶどう品種でした。

このぶどうを生み出したのは、「日本のワインぶどうの父」と呼ばれる川上善兵衛です。川上善兵衛は1890年、新潟県上越市に岩の原葡萄園を開きました。

日本はヨーロッパと比べて雨が多く、地域によっては雪も多いため、海外から持ち込んだワイン用ぶどうをそのまま育てるのは簡単ではありませんでした。そこで善兵衛は、日本の気候や風土に適したぶどうをつくろうと、1922年から品種改良に取り組みます。

その試みは、なんと1万311回。長い研究と試行錯誤のなかから選び出された22の優良品種のひとつが、ブラッククイーンでした。

ブラッククイーンは濃い色と豊かな酸味を持ち、現在も日本の赤ワインづくりに使われています。その特徴を知ると、私がジュースを飲んだときに感じた「濃厚さ」や「ワインのような深み」にも納得しました。

三日本でワインをつくるという挑戦

日本にワインが伝わったのは、戦国時代の1549年といわれています。宣教師フランシスコ・ザビエルが薩摩の武将・島津貴久にワインを献上したという記録があり、当時は「珍陀酒(ちんたしゅ)」などと呼ばれていたそうです。

しかし、海外からワインが伝わることと、日本の土地でワインをつくることは別の話です。雨が多く湿度も高い日本でぶどうを育て、日本らしいワインをつくるまでには、長い試行錯誤がありました。

川上善兵衛がぶどうづくりに取り組んだ背景には、単においしいワインをつくりたいという思いだけではなく、故郷の暮らしを豊かにしたいという願いもありました。

善兵衛が暮らしていた上越地方は雪深く、洪水も多い土地でした。米づくりに苦労する農家の姿を見て、新しい産業を生み出すことで地域を支えたいと考えたのです。

海外から伝わったワイン文化を、そのまま取り入れるのではなく、日本の気候や暮らしに合う形へと育て直す。ブラッククイーンは、そんな日本人の工夫と情熱から生まれたぶどうだったのです。

結一杯のジュースから、歴史が広がっていく

軽井沢で何気なく出会った一本のぶどうジュース。そこから、日本の気候に合うぶどうをつくろうとした人の情熱や、日本ワインの歴史までつながっていきました。

最初は「ブラッククイーンって、何だろう?」という小さな疑問でした。けれど調べてみると、その名前の向こうには、故郷の未来を思い、1万回を超える挑戦を重ねた人物の物語がありました。

身近な食べものの向こう側には、まだ知らない歴史や文化が隠れています。食べること、飲むことから物語を広げてみると、いつもの一杯が少し違って見えてきます。

今日のひとこと

軽井沢で出会った一杯から、日本ワインを支えた人の物語まで旅することができました。

読んだあとに

3つのおすすめ|やってみよう

  1. 01

    飲む前に色と香りを観察する

    よく冷やしたジュースを脚付きグラスやカクテルグラスに注ぎ、色、香り、酸味、余韻を順番に確かめます。

  2. 02

    別品種のぶどうジュースと比べる

    品種名の分かる二種類を飲み比べ、甘さ、酸味、深みの違いを言葉にします。

  3. 03

    日本生まれのぶどうを一つ調べる

    瓶やラベルで見つけた品種名から、誕生した土地と現在の産地をたどります。

参考:岩の原葡萄園「葡萄園について」/農林水産省「ワインの豆知識」