葛の涼やかさと、和菓子に咲く美術の記憶。
今日は虎屋赤坂店に行ってきました。そこで出会ったのが、「水仙夏菊」と名付けられた白餡入りの葛餅です。透き通る葛の中に白餡が包まれた姿は、まるで夏の光をそのまま閉じ込めたようでした。
この記事で分かること
- 葛菓子が夏の「涼」をどのように表してきたか
- 五百年続く虎屋の歴史と、受け継がれてきた菓子文化
- 和菓子の銘や意匠と、日本美術とのつながり
一夏の日の出会い
ひんやりとした葛の口当たりに、子どもの頃、夏祭りで必ず葛餅を食べていたことを思い出しました。にぎやかな屋台、夕暮れの空、風に揺れる提灯。味や香りには、忘れていた時間を呼び戻す力があります。
ひと口の涼が、遠い夏の記憶を連れてくる。
二葛菓子の歴史
葛は古くから日本の暮らしに根づいてきた植物です。根から採れる葛粉は食だけでなく、体をいたわるものとしても大切にされてきました。透明感のある葛菓子は、冷房のない時代に視覚と口当たりの両方から「涼」を感じる、日本らしい夏の知恵です。
三五百年続く虎屋
虎屋は室町時代後期に京都で創業したとされ、長く御所の御用を勤めてきた菓子屋です。東京遷都に伴って東京へ進出し、時代が移っても菓子の意匠や銘、素材への姿勢を受け継いできました。赤坂店のギャラリーでは、菓子そのものだけでなく、菓子を取り巻く歴史や文化にも出会えます。
四菓子と美術
和菓子には、季節の草花や和歌、物語、絵画の世界が小さな形に凝縮されています。虎屋を代表する羊羹「夜の梅」という銘は、切り口に見える小豆を、夜の闇にほころぶ梅の花になぞらえたもの。赤坂店の展示からは、鈴木春信の浮世絵に描かれた情景と菓子文化の響き合いも感じられます。
食べてなくなる儚いものだからこそ、季節の一瞬を形にする。和菓子と日本美術は、自然をよく見つめ、限られた形の中に余韻を残すという美意識で深くつながっているのだと思います。
今日のひとこと
いつもの甘味も、その名と形をたどれば、歴史と美術への入口になる。
読んだあとに
3つのおすすめ|やってみよう
- 01
季節の和菓子を一つ選ぶ
食べる前に名前、形、色を眺め、その意匠のもとになった景色や植物を想像してみます。
- 02
葛菓子を冷たいお茶と味わう
透明感、口当たり、温度が生み出す「涼」を意識し、感じたことを短い言葉で残します。
- 03
菓銘から美術へ寄り道する
気になった菓子の名前を一つ選び、つながりのある和歌、絵画、季節の意匠を調べてみます。
