身近な和菓子から、下鴨神社の御手洗池と五つ玉の形へ。
みたらし団子は、スーパーでもよく見かけるほど身近な和菓子です。けれど食べ比べてみると、たれの味、お餅の焼き方、形や大きさに店ごとの個性があり、同じ名前の菓子とは思えないほど違いがあります。
この記事で分かること
- 「みたらし」という名前と、京都・下鴨神社のつながり
- 五つの団子を少し離して刺す形に込められた意味
- たれ、焼き方、形から楽しむ食べ比べの視点
一身近な団子にも、店ごとの個性がある
みたらし団子の基本は、米の団子を串に刺して焼き、醤油を使ったたれをからめること。とても簡素な組み合わせだからこそ、小さな違いが味に大きく表れます。
たれは、砂糖の甘さが前に出るものもあれば、醤油の香りや香ばしさを強く感じるものもあります。さらりとしたたれと、とろみが強く団子にたっぷり絡むたれでも、印象は変わります。
焼き方も同じではありません。表面を軽く温めたやわらかな団子と、焦げ目がつくまで焼いた香ばしい団子では、同じたれを合わせても味わいが違います。丸い団子、五つ玉の団子、梅園のような平たい四角形。形は見た目だけでなく、火の入り方や、たれのまとい方にも関わっています。
食べ比べることは、身近な一串の中に隠れた作り手の選択を味わうこと。
二「みたらし」は、神社の水の名前
「みたらし団子」という名前は、京都の下鴨神社にある御手洗池にちなむと伝えられています。「御手洗」とは、神社で参拝の前に身を清める場所や水を指す言葉です。
下鴨神社の伝承では、御手洗池の底から湧き出る水の泡を団子の形に表し、夏の神事に供えたことが、みたらし団子の始まりとされています。
今では甘辛いたれの名前としても「みたらし」が通じますが、その言葉の奥には、神社の清らかな水と、無病息災を願う祈りがありました。
三五つの団子は、何を表しているのか
京都に伝わる古い形では、一つの串に五つの団子を刺し、先頭の一つと残りの四つの間を少し空けます。京都市観光協会の解説では、最初の一つを頭、続く四つを手足に見立て、人体を表すとも伝えられています。
一方で、御手洗池から最初に一つの泡が浮かび、そのあとに四つの泡が続いた姿を写したという説もあります。起源を一つに断定するより、池の景色や身体への祈りが、食べものの形に重ねられてきた伝承として見るのがよさそうです。
一串の形に、人の身体と水の泡。その小さな造形には、日本の食文化が自然や祈りを目に見える姿へ変えてきた美意識も感じられます。
四夏の御手洗祭から、日常のおやつへ
下鴨神社では、夏の土用の丑の日の前後に御手洗祭が行われます。「足つけ神事」とも呼ばれ、参拝者は御手洗池の清水に足を浸し、灯明を供えて無病息災を祈ります。
神前への供えものや厄除けの意味と結びついていた団子は、やがて茶屋や町の菓子として広がり、今ではスーパーにも並ぶ日常のおやつになりました。
食べる場所や形は変わっても、「みたらし」という名前は、京都の水と夏の祈りの記憶を今も運んでいます。
五食べ比べるなら、どこを見る?
まずは、たれの甘さ、塩気、とろみ、醤油の香りを比べます。次に団子の食感を見てみましょう。やわらかいか、弾力があるか、米の風味を感じるか。最後に、焼き目と形を観察します。
添付の写真は、京都の梅園でいただいたみたらし団子です。平たい四角形の団子にははっきりとした焼き目があり、丸い団子とは異なる佇まいをしています。
どの店が一番かを決めるのではなく、それぞれが何を大切にしているのかを味わう。そう考えると、よく知っていたはずのみたらし団子が、もう一度おもしろく見えてきます。
今日のひとこと
身近な一串の向こうには、京都の水、夏の祈り、作り手ごとの工夫が重なっている。
京都で食べ比べるなら
3つのみたらし団子店
- 01
梅園
写真の団子をいただいた甘味処。平たい四角形と、表面についた焼き目が目を引きます。河原町店をはじめ複数の店舗があるため、訪問先のメニューを公式サイトで確認してください。
- 02
加茂みたらし茶屋
下鴨神社の近くにあり、みたらし団子の由来とされる場所と一緒に訪ねやすい店です。神社の御手洗池を見たあとに味わうと、名前と土地のつながりを実感できます。
- 03
古都香
出町柳駅近くのみたらし団子店。大きさや焼き目、たれのまとい方を、ほかの店と見比べる楽しみがあります。催事などによる休業もあるため、最新情報の確認がおすすめです。
価格、メニュー、営業日・時間は変更されることがあります。訪問前に各店の最新情報をご確認ください。
参考:下鴨神社「みたらし祭」/京都観光Naviぷらす「京都観光の予習 これだけは知っておきたい京の菓子」/国立国会図書館 レファレンス協同データベース「みたらし団子の起源」
