晩ごはんの地蛤から、貝合わせと婚礼文化へ。
皆様、最近蛤(はまぐり)は食べましたでしょうか。我が家では今週二回、晩ごはんに地蛤を食べました。スーパーで時々見かけると、つい買ってしまう大好きな食材です。
この記事で分かること
- ひな祭りに蛤のお吸い物をいただく理由
- 貝合わせと『源氏物語』、やまと絵のつながり
- 蛤の殻が婚礼文化の象徴になった背景
一仕事終わりのご褒美
この日は、大きな蛤が二個入ったパックを発見。仕事を頑張った日のご褒美にしようと思い、迷わず買いました。ふっくらした身から出る旨みと、貝のだしが本当においしいですよね。
東京では普通のスーパーでも地蛤を見かけますが、京都に住んでいた頃は、あまり目にしなかったように思います。土地によって店頭に並ぶものが違うことも、食文化のおもしろさです。
二旬なのかと思ったら
最近よく見かけるので、今が旬なのかなと思って少し調べてみると、一般に蛤の旬としてよく紹介されるのは春先。産地や種類、漁の時期によっては夏頃まで出回るものもあり、今回はたまたま出会えたのかもしれません。
蛤といえば、ひな祭りのお吸い物を思い浮かべる方も多いはずです。対になった殻だけがぴたりと合うことから、よい縁や夫婦和合の象徴として大切にされてきました。
晩ごはんの一皿が、平安の遊びと婚礼道具につながっていく。
三蛤の殻で遊ぶ「貝合わせ」
蛤の殻を使った遊びとして知られるのが、貝合わせです。もとは左右の貝殻に描かれた絵や和歌の趣向を鑑賞する遊びでしたが、のちには多くの貝から対になる殻を探す「貝覆い」も広まりました。
殻の内側には金地に大和絵が施され、草花や物語の場面が小さな世界として描かれました。手のひらほどの貝の中に、季節や文学を閉じ込める発想がとても美しいです。
四『源氏物語』を描く小さな画面
貝合わせの意匠には、『源氏物語』の場面も好まれました。平安の宮廷を描く物語と、宮中に由来する優雅な遊び。文章で読まれてきた世界が、やまと絵となり、さらに蛤の内側へ移されていきます。
蛤は食材であるだけでなく、文学と美術を運ぶ「小さな画面」にもなったのです。食から学び始めると、思いがけない場所で物語と出会えます。
五貝桶と婚礼文化
美しく装飾された貝は、対になる殻を納める八角形の「貝桶」とともに、近世の大名家などの婚礼道具として重んじられました。一対の殻がほかの殻とは合わないことに、夫婦の結びつきや末永い幸せへの願いが重ねられたのです。
ひな人形の道具に貝桶が見られるのも、こうした婚礼文化とのつながりから。ひな祭りの蛤のお吸い物、貝合わせ、源氏物語、婚礼道具は、別々の話ではなく一本の文化の糸で結ばれています。
今日のひとこと
スーパーで買った蛤から、源氏物語まで寄り道できました。身近な食材の向こうに、文学と美術の世界が広がっています。
読んだあとに
3つのおすすめ|やってみよう
- 01
二枚の貝殻を合わせてみる
蛤料理を味わったあと、左右の殻を重ね、対の殻が夫婦和合の象徴になった理由を確かめます。
- 02
『源氏物語』の貝合わせを見る
美術館の作品画像などで貝合わせを探し、殻の内側に描かれた場面や草花を見比べます。
- 03
ひな祭りの食卓で由来を伝える
蛤のお吸い物を用意し、対になる殻に込められた願いを食卓で話してみます。
